また、いつか
「姫、泣かないでください。
私は貴女に泣かれるのが一番辛いのだから」


本当は、自分だって純粋で無垢なこの童女のような方の側にいてやりたい。

真綿で包むように、ずっとずっと守ってやりたい。

でも…。


「私にはお勤めがあるのです。
また来年、必ず必ず貴女の元に戻って来ますから、どうか元気なお顔を見せてくださいね」


泣き疲れて眠ってしまった幸姫の額にそっと唇を寄せると、治憲は彼女を抱きしめたまま布団に横たわり、朝まで添い寝するのだった。



そして翌朝、彼女のあどけない寝顔を目に焼き付け、治憲は江戸を離れ国元に発った。

< 4 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop