焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「本当は無理やりにでも振り向かせたい。私しかその目に映さないでほしい」
あふれる気持ちはとまらない。
「あなたがどんどん樹季と仲良くなっていくのだって嫌よ」
覚悟していたけど、面と向かって言われるとやっぱり堪える。
「私のほうが昔から知ってるのに。どうしてあなたがっ」
続く言葉を飲み込んで、亜里沙さんは荷物をまとめる。
「あなたが、樹季を好きだと言うなら。私だって、もう遠慮しない」
「……亜里沙さん」
「樹季を振り向かせるのは私よ。絶対に」
強い意志を宿した双眸で見つめられる。
そして最後に好戦的な笑みを浮かべ、部屋を出ていった。
宣戦布告されてしまった。引き金をひいたのは自分だけど。
「私だって」
本当は、どうするべきなのか一番決めかねていたのは自分かもしれない。
亜里沙さんはもう何かを決心したようだった。じゃあ、私は。
ふいに目を逸らした先には、いつかのシーグラスで作ったメモスタンドがこちらを向いていた。