転生令嬢は小食王子のお食事係
 私は卵のカルツォーネの方を掴むと、両手でしっかり持って半分に割った。
「半分ならどうですか? 残りは私が食べます。驚いたらお腹すきましたし」
「……じゃあもらおうかな」
 レオナール殿下が手を伸ばしたほうのカルツォーネを渡す。
 手づかみでそのまま齧りつくのはあまり行儀がいいわけじゃないけど、ピクニックだしパンの一種だと思えばそれほどおかしくはない。
 レオナール殿下よりも先に私はあむっと齧りつく。冷めているがそれでも外側のパリッとした食感はそのままで、噛むともっちりとした生地が小麦の甘さを引き立たせている。
 中のとろっとした卵と、ベーコンとチーズの組み合わせも最高だ。
 サンドイッチとは違い、生地と一緒に焼き上げていることで一体感もあるし、ボリュームも満点だ。具材が包まれているので中身がサイドから飛び出してくる心配もないので食べやすい。
 ふた口食べたら、お茶を飲む。
 ちらりとレオナール殿下のほうをのぞき見ると、彼もゆっくりとではあるがカルツォーネを食べ進めていた。
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