寂しがり屋の月兎
第五章
満に平手を浴びせた少女の顔は歪んでいた。

いかに可愛くメイクをしても、性根が曲がっていては、上辺だけの面の皮は剥がれるものだ。

女子はなおも満に右手を振りおろそうとしている。

閉じそうになる眼を見開いていた満は、次の瞬間黒い影が割り込むのを見た。

飛んできた平手は黒い影の手の甲で止められた。

周りにいた女子たちがみんなぎょっとした顔をする。

『あ……新く……』

目の前にいる女子は蚊の鳴くような声しか出せない。

呼吸を荒くして、恐れたようにその場を立ち去った。
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