寂しがり屋の月兎
「私ね、後から気づいたのよ」

「なにに?」

彼女は微笑を浮かべている。

三日月は有明の左頬を眺めた。

きれいな肌である。望の処置がよかったからだろうか。

「望が私の恩人なのよ」

「……どういう意味?」

「私、望に割り込んでもらわなきゃ、絶対ひどいこと言ってたわ」

あのとき、私も我を忘れてたから、と呟く。

「被害者だから、なにを言ってもいいなんてこと、ないのにね。叩いたことは相手が悪かったと、今でも思うけど、それは傷つけていい理由にはならないわよね」

「……そうだな」

「あのとき言っちゃってたら、私もあの子と同類だった。人のこと傷つけて、それを当たり前だと。罪悪感なんて、きっと感じなかった」

だから、といつの間にか独白のようになっている。

彼女の言葉を取りこぼさないように、三日月は黙って耳をすませる。
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