寂しがり屋の月兎
遊びに行こう、でいいではないか。

映画を観に行こう、それでいいはずだ。

デートだなんて言われると、変に意識するというか、気恥ずかしいというか、とにかく、困るのだ。

分不相応な気がしてならない。

「ね?」

いつの間にか、兎田の顔が近くにあった。

反射的に望は身を引く。

「朔」

たしなめる声が三日月から飛んだが、兎田はきれいに無視する。

「映画、観に行こ? 望ちゃんに都合合わせるから」

「え、えっと……」

「細かいこと決めるために連絡先教えてくれる?」

「いや、あの……」

「俺と出かけるのはいや?」

「えっと……えっと……、ほ、保留で!」
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