今宵、貴女の指にキスをする。

「人のモノ取るほど飢えてないし。諦めるから安心してくれよ、木佐ちゃん」
「堂上さん……」
「本当に悪かった」

 円香に対し、もう一度頭を下げると、堂上はそのままエレベーターに乗り込んだ。

 扉が閉まる瞬間、小さく手を振っていた堂上。
 その表情は、切なくなるほど悲しげで……円香の胸はチクンと痛んだ。
  
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