今宵、貴女の指にキスをする。

「詳しいことはわからないのですが。パーティーの夜以降、堂上課長の行動が怪しいんです」
「怪しい?」
「ええ。木佐先生のことを探るようなことを聞いてきたり。どうしてかと本人に聞いてはみたのですが、あのようにのらりくらりとかわされて。堂上課長、あまり女のことでは良いことを聞かないものですから」
「……」

 無言のまま考えこむ円香に、七原は念を押した。

「とにかく堂上課長には気をつけてください。木佐先生に何かを仕掛けてくるかもしれない」
「まさか」

 顔の前で手を振る円香に、七原は未だに神妙な面持ちでいる。

「私は今後も堂上課長が妙な動きをしないよう気をつけますが、とにかく木佐先生も気をつけてください」
「は、はぁ」

 七原の真剣な声色に、円香はとにかく何度も頷いた。
 そんな円香に対し、七原は未だに戸惑っている様子だ。

「もしかして、堂上課長が木佐先生に本気とか? いやいや、まさか。いやでも……」

 七原の呟きに、円香は顔を引きつらせたのだった。


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