できすぎる上司♂と不器用すぎる部下♀
「うまいか?」
「はい。」
「よかった。」
そう言ってくしゃっと笑う司。
桃は鼻水をすすりながらむしゃむしゃとおにぎりを食べた。

「なんでもひとりで抱え込むな。頼ったり甘えてもいいんだよ桜木だって。」
「……。」
「食べたらやるぞ。間に合わないぞ。」
「はい。」
司はパソコンのディスプレイを見つめたまま落ち着いた声で話す。その言葉に桃は涙と一緒におにぎりを飲み込んだ。

誰かの前で堪えきれず涙を流すなんて…6年前の大きな悲しみのあとはなかったのに。

自分の感情が司の前だと抑えられない。

そんな自分に驚いた。
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