拝啓 元カレ上司サマ

しかし、事態は急転直下を迎える。

家族の淡い期待は、たった今破られてしまったのだ。

長男次男が病院に来るまで、宗也は待っていてくれたのだろう。

「パパ、パパ…逝かないで」

と泣きじゃくる子供達を見守るように、二人が宗也の手を握って逝かないでくれとすがるその時に、彼は旅立って行った。

疲れて眠る長女を抱き締めながら、麗香もさめざめと涙を流す。

そしてやっと理解したのだ。

もう宗也が帰って来ないことを。


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