拝啓 元カレ上司サマ

それから直ぐに、麗香は煌太が自分を庇って、彼自身が下敷きになったことを知る。

麗香が呆然としている一方で、何人もの人が煌太の上に落ちて来た鉄パイプなどを取り除いていたが、数分で救急車は到着した。

「どなたかお知り合いの方いらっしゃいませんか?」

皆に尋ねるや否や、麗香が救急隊員に駆け寄って行く。

「私の上司です」

色々聞かれて、麗香も救急車に同乗することとなった。

「ヒック、ヒック、煌太、目を開けて…ヒック」

麗香は泣きながら、救急車で寝かされている煌太の手を握り、自分のおでこの辺りに持っていく。

「お願い、目を開けて、どうして私なんかを助けたの?」

小さな声で煌太に尋ねるが、返事は返って来ない。

車内には、煌太が生きている証である心拍音が鳴り響いていた。




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