拝啓 元カレ上司サマ

トウルルルルー

珍しく電話が鳴った。

「沙穂、電話なんて珍しいね」

何事もなかったように話す麗香に、沙穂は思わず、

「馬鹿!課長のこと心配なんでしょ?何で戻って来たのよ」

心の奥底に一年間隠し続けた想いを、親友はいとも簡単に見破ったのだ。

「麗香、あんたが課長のことを本当は好きだって、分かってたの。だから合コンで、どうしても課長に対する誤解を解きたかったんだけど…」

ダメだったから、焦っていたと告げる沙穂に、ありがとうと言う以外ない麗香は、さすがは姉御肌の沙穂さんねと、涙声で言った。

そして電話を切ると直ぐに、泊まりの準備をしてタクシーを呼び、いそいそと病院へ向かう麗香。

もう、煌太への隠しきれない愛情を、認めざるを得ない状況なのだと気付いた瞬間に、なんだか、目の前が明るくなったような気がした。


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