今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -
この街の朝は静かだった。
店はシャッターを下ろし、通りを歩く人もまばらで、夜の騒がしさはどこにも残っていない。
昼夜がひっくり返っているような不思議な感覚に陥った。
「すごく静かだね」
斜め前を歩く響平に声を掛ける。
ずっと黙りこんでいたから、もしかしたら無視されるかもしれないと思ったけれど、「うん?」と返事をして振り向いてくれた。
「夜とは違う場所みたい」
「ああ。今日は休みだからな」
「休み?」
「この街には月に1回、休みがあんだよ。たいてい会合の次の日。街全部の機能が停止する日」
街の休暇。
私たちの世界とは違う常識があることを実感する。
「会合って、昨日の……だよね」
「そ。いきなり連れてったけど意味わかんなかったろ、ごめんな」
ごめん、なんて微塵も思ってない調子でそんなことを言う。
でも、そんなところすら好きだと思ってしまうから困ったもの。
「明るいのにこんなに人がいないって不思議な感じ」
「俺だってお前を送らなくていいなら、まだフツーに寝てる」
「あ……ごめんね。朝から付き合ってもらって」
ひとりで街を出て寮に帰ることができればよかったんだけど、襲われそうになったことを思い出すと、もう怖くてできなかった。