秘密にしないスキャンダル
「え!?隆矢君!?」

突然現れたように見えたのだろう美佐は驚きのあまり一歩後退り口を両手で覆い隠していた。
そんな美佐を気にせずに勇菜の隣に立つと、勇菜の手が近くで見ないとわからないくらい小さく震えているのに気付き、そっと手を握ると勇菜は少しだけ顔を上げて困ったように微笑んだ。

たった一人で生放送の、共演者に味方は一人もいない状態で自分のスキャンダルの潔白のために飛び出すのはやはり勇菜といえども勇気がいったのだろうと気付くと隆矢は握った手の力を強めた。

「一ノ瀬君……?
一体どうしたんですか?」

MCの男性が恐る恐るといったように話しかけてくるのを見て、隆矢はそちらの方へ体の向きを変えると徐に口を開いた。

「……ユウナのスキャンダルを覆すような話題を提供しようかと思って来ました」

「え、隆君……?」

勇菜が戸惑いがちに隆矢を見上げると、隆矢は目を細めて少しだけ微笑んだ。
手は握ったままで空いている方の手を勇菜の肩に置いて優しく抱き寄せ、額にそっと唇を寄せるとこちらを映していたカメラを真っ直ぐ見据えて小さく息を吸った。
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