Love Eater
自分不在の場で性質の悪い男達が度々そんな密会をしているなんて露知らず。
知っていても今という瞬間は然程の興味も抱かぬであろうソルトは、日課の如く恋しい姿を探し求めて裏路地を徘徊していたのだ。
気が付けば見上げる空は夜の帳を広げている。
明かりなんてない視界は歩くのも困難であると言える筈なのに、もう何度も、何日も繰り返し歩き抜けている細道は勝手知ったるものなのだ。
あまりに通り過ぎて普通であるなら気にも留めない壁のシミやヒビの入り方まで記憶してしまった程に。
自分でも何をしているのだと自問する理性はあるのだ。
いくら探そうが無意味だろうと訴えてくる自分がいる。
女々しい感情なんて持ち続けてどうすると叱責する自分も。
果てには狂ったのか?なんて問いかけてくる自分までいる始末。
そんな幾人もの自分の中の人格が煩く喚くのを感じて尚、探し求める欲求を抑制出来ずにいるのだから末期だと自分でも思う。
「……どこにいるんだよ」
こんな問いかけすら毎度の事。
探し求める際につもりに積もったもどかしさが無意識にもこうして口から零れてしまうのだ。
時に「六花」なんてその名を響かせてもみる事もある。
名前を呼んでみれば今にもふざけた感じに飛び出してきそうなものなのに。
ソルトの呼び声はただ虚しく空気に解けて消えて行くばかりで、名前を呼ぶほどに一人なのだと痛感して悲観にくれてしまうのだ。
こんなつもりじゃなかったのに。
決別なんてするつもりじゃなかった。
『僕の事が好きな癖に』
そんな風に鬱陶しく突いてこられていた瞬間が如何に恵まれた瞬間であったのか。
悪戯に無邪気で、イキイキして。
実に年相応の女の子という姿であった。
「……真っ当に……大きくなったてのにな」
脳裏に浮かぶのは生の喜びも生きがいも必要性すら知らぬ頃の幼小の姿。
死ぬ為の生だと言い切った幼小の記憶と最後に見た六花の姿が一致する度に更にもどかしさに暮れるのだ。