Love Eater



今もそんなもどかしさと疲労に蝕まれ、のそのそと歩いていた歩みを止めた刹那であった。

「クックッ、今日も張り切って亡霊してるねぇ」

「っ……蓮華ぇ…」

そんな茶化したような声音が背後から響いてくることには、苛立ちの感情が悲哀を押し退けソルトの表情を造り変えてくる。

勿論、そんなあからさまに憤りを見せつけられて堪える蓮華である筈もなく。

それどころか憤りを煽るように背後からスルリと腕を絡めて身を寄せてくるのだ。

「本当に不能だねえ。こんな風に簡単に俺に後ろ盗られるなんて【ソルト】きゅんともあろう男が」

「気色わりぃ!!無意味に引っ付くんじゃねえよ!ってかその呼び方やめろっ!癇に障る!!」

「え~、だってそう呼ばれてたじゃんか魔女子ちゃん…あ、六花ちゃんだっけ」

「お前ぇ…全部ワザとだろ?そんなに傷心な俺を弄って傷を抉って楽し…」

「楽しい」

「よし、それが遺言でいいよな?」

「あっはは、残念ながら俺はこの銃弾じゃあ死なないなぁ」

どこまでも人を小馬鹿にした蓮華の態度には、心の余裕なんてある筈のないソルトが銃口を蓮華の額にめり込ませる。

当然中に詰められているのは対魔女用の薬弾であるからして、人の命を奪うような凶器にはなり得ないのだが。

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