Love Eater



発熱、発汗、倦怠感。

ここ数日ソルトを蝕む体の症状で、これだけ聞く分には風邪でもひいたのだろうと結論付けられる。

でも実際、そんな生易しいものじゃない事をソルト本人が一番理解している。

数日はなんとか気力で人並みに清潔を保ち普段通りに過ごしてきたが、とうとう今朝からは起き上がるのすら億劫だと倒れ込んだのだ。

そうして半日も過ぎた頃合い。

「実に愉快に出来上がってるねぇ」

朦朧とした頭に不意に入り込んできたそんな声音には意識の糸が張り直された。

どこかあどけない声音は馴染みのある物だから警戒はしない。

警戒はせずともこの苦痛な現状で聞くには、相手の性質を知るからこそ鬱陶しくもあり、ありがたくもあり。

それでも後者が勝るからこそ気怠い体をなんとか僅かにも持ち上げ、声の主へと視線を動かしたのだ。

普段であるなら舌打ちの一つでもして出迎えるところなのだが…、

「はあっ…はっ…助けて…ください」

「ブッ、クックックッ…あははっ!満身創痍〜。いや、ある意味真逆で苦しいのかな?何にせよリッくんの口から皮肉より先にしおらしさが聞けるとかおっちゃん感激よ?」

「てめえはっ…」

「おっとぉ、ほらほらカッカしなさんなって。ただでさえ身体の熱を消化できずに持て余し過ぎての現状なんでしょうが」

微睡んだ視界に映しこんだ姿はソルトの異常さを見舞う様子などまるでない。

それどころか実に愉快だとケラケラ笑って、熱り立ったソルトの額をトンッと軽い力で小突いてあしらってくる。

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