Love Eater
元々口も固く無闇矢鱈に自分を語るタイプでもない。
ソルトなんて呼ばれてはいるが、あくまでもそれは仮初めのあだ名。
ソルトが一向に教えてくれないものだから六花がつけた2人の間のみ成り立つ皮肉込みの呼び名なのだ。
塩対応のソルト。
そんな風に未だに名前すら明かしてない関係性にどうして自分の国家機密と言える事情など漏らそうものか。
そんな切り返しにハァッと響く百夜の溜め息はどこか『つまらない』と期待外れにも聞こえるのだから、やはりタチが悪く食えない奴なのだ。
「まあ、なんにせよこればっかは僕も手の施しようがないねえ」
「打ち破るとか出来ないのかよ?」
「呪いだからね。そう簡単に打ち破れられる様に出来ちゃいないさ。かけた本人に解除しろと直談判するのが一番被害は少なそうだけども、呪いにだって種類様々。その複雑さたるやかけた本人でさえ解除不可のものだってある」
「はっ!?不可っ!?俺一生こんな生殺し状態なのかよっ!?」
「そういうのもあるって話でしょうが。だから興奮しなさんなって悪化するだけなんだから。大抵の呪いには救済措置の様な条件が付くもんでね、特に今回の場合は別にリっ君に怨みつらみあってのそれじゃない。多分何らかのアクションで解ける類の可愛らしいものだと思うんだけど」
「何らかって!?」
「さぁ?そこは呪いをかけた彼女のみぞ知るってとこでしょ」
「っ~~~」
分かっている。
分かっているのだ。
人の気も知らずどこまでも楽し気に小首を傾げるこの男に腹を立てたところで何の解決にもならない事を。
それでもつい、『一発は殴りてぇ!』なんて感情は否めずベッドの上で拳を握ってしまうソルトがいるのだ。