稲荷と神の縁結び
窓の向こうに視線をやると‐よく知っている人がいた。
庭には数十人の人溜まりがあり、その中で一際目立つ紫の袴の人物。

「禰宜さん……」

「ん?」

「あの袴の人、近くの國前神社の禰宜さんです」

「ああ、あの大きな神社の?」

「はい、私がよくお手伝いに上がっておりました」

私達とも付き合いが古く、すこしおせっかい(滋子様の言葉を借りるなら…姑根性が甚だしい)な禰宜さんだ。
庭の奥には小さなテントと、椅子などが確認できる。何か行事を行うみたいだ。


「本日、何か祭典の予定があるのでしょうか? 」

「えーっと、何か午前中に庭園の神社で集まりがあるってパパが言ってたような」

(三十路越えてパパ呼ばわりかいと突っ込みたいが……)
「きっと新嘗祭でしょうね。ご挨拶に伺いますので、しばし失礼してよろしいでしょうか?」

返事を聞くまでもなく私は立ち上がり、庭の方へと歩いていく。
なぜか着いてくる清貴さん…と、後ろにもあのお二方。

しばらく庭を歩いていくと、禰宜さんと目があったので「禰宜さん!」と私は大きく手を降った。
禰宜さんもこちらに気付いたので、少し早足で駆け寄る。
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