稲荷と神の縁結び
「あれま……こはるさんではないですか!どうなされましたか?」

「どうもご無沙汰しております。近くに用事がありまして、ふとこちらが目に入ったものでご挨拶だけでもさせていただこうかと。
本日は新嘗祭でしょうか?」

「はい。午前中はこの分社が私の担当でございまして、午後からは本社の方でも行われる予定です。
ところで…そちらの御方は?」

チラッと横目で清貴さんを見る禰宜さん。
こっちも値踏みかいと突っ込みたい。

「えっと……永江さんと申しまして、お兄様のご友人なんです」

「おお、圭吾さんのご友人とは。圭吾さんのご紹介か何かで?」

「いえ、実はわたくしが勤めております会社の社長なんです。本当に偶然の話で、わたくしも驚いたのですけれど」

「あら、社長さんなんですね。これはこれは。いつも時松の皆様にはお世話になっております」

深々と頭を下げる禰宜さんにつられて、清貴さんも頭を下げている。

「ひょっとして二人は、お付き合いされておられるとか?」

「はい、結婚を前提に」
…って禰宜さんの前でも嘘はつかなくても!と清貴さんを見たが‐そのすぐ後ろにあの二人も見える。
これは…禰宜さんも騙さなければいけないのか。
ごめんなさい禰宜さん…と心で念じる。
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