稲荷と神の縁結び
亡くなったお祖父様は、礼儀作法に厳しく…それも間違った方向に厳しい人だった。
常に『この地を守る人間であることを忘れるな』と私達に言い聞かせ、恥じることのないような人間に育てようとしていた。私も毎日、日本舞踊の稽古にお茶に華道、雅楽など色んなことをやらされて…尚且つ、夜遅くまで休み無く勉強をさせられた。


『うちの名前に恥じぬよう』という名目であったが、それはもう平成の時代には『時代錯誤』という言葉の通り。
お祖父様はどんどんとお金がなくなっていき没落していく家を認めず、見てみぬフリをしていた。そんな人だったのだ。


だから、お祖父様とお祖母様が亡くなった時は‐心底私達は、嬉しかった。


「二人が続けて亡くなった時、圭ちゃんが『今日から家でお兄様はやめろ』って言ったんです。
それもあったし、圭ちゃんが主体になってうちは普通の家になった。まぁだからと言って……世間の目は変わることはないんですけどね」

お祖父様が亡くなられてから、うちの膨大な借金が発覚した。でも『跡取り様』とチヤホヤされて育った父に返す能力があるわけもなく……だからと言って、母がどこか働きに出ても『あそこの奥様が……』と噂されるようなそんな状況。

だから圭ちゃんは人一倍勉強して、うちの借金が帳消しになるように努力した。
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