稲荷と神の縁結び
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時刻はもう昼の二時。
マスコミの波が落ち着いたので、対応に追われた両親は小休止中。私は境内に誰も居なくなった隙に、掃除をすることにした。
箒を持って外に出ると……がらんとした境内に、焼き焦げた鳥居。
一回り小さくなったように、脆くなった柱に…あの朱色だった色は、見る影もなく真っ黒に変わっている。
未だに……これは夢なのではないか。やっぱりそう思ってしまうが、いくら頬をつねっても痛いだけだった。
はぁとため息をついて掃除にかかるが、予想以上にゴミが多い。
父親からの情報では、この騒ぎもあって「朝は近所のボランティアが掃除してくれた」そうだが……なんせあのマスコミの波なので、ゴミが出るのも致し方ない。
来客までには綺麗にしておきたいなぁと思いながら、私はひたすら無心で箒を振り回すことにした。
「…………はるちゃん?こはるちゃん?」
ふいに呼ばれたことに気付いて顔を上げると‐意外な人が立っていた。
「和茂さん……」
ふんわりと、しなやかな笑みを浮かべているのは‐あの正月の騒動以来に会う和茂さんだった。