稲荷と神の縁結び
木々の隙間から、冷たい風が吹き抜けている。
その中で私は呆然と立ち尽くす。
えっと……この目の前にいる人は、何と言った?
『結婚しないか?』と………?
「えええええ!!!」
思わず叫び、腰を抜かしそうになる。
いや、この人はそもそも私より一回りほど年上で…私が幼い頃から知っているはずだし、そんな結婚なんかの対象には…いや、まてよ。
「ひょっとしてロリコ…」
「それはない」
呆れたようにため息をついている和茂さん。
「君、だってもう二十歳をとっくに越えてるじゃん……」
「でも…和茂さんは、私が幼い頃から知ってますよね?どう考えてもそんな対象になんかならないかと思うんですが……」
「ま、正直こはるちゃんを恋愛対象に見れるかと言えば、そうじゃない」
だったら…といいかけた所で、和茂さんは畳み掛けるように続ける。
「正直に言おうか。僕は兄を追い出したい。その為には、結婚して『後継ぎ』を作ることが一番の優先課題。
そして結婚相手にはしっかりとした子が求められる。将来の社長の奥さんになるはずだからね。その条件に合うのがこはるちゃんだった。それだけだよ」
確かに…和茂さんが言っていることは筋が通っている。