稲荷と神の縁結び
釜谷さんの家とは旧い付き合いで……お互いにどういう家であるかというのは、よくわかっている。
それに『後継ぎ』問題は、現代の今でも……時代錯誤と言われようと、求められてしまう問題だ。

「こはるちゃんも……ここの地域に顔が広い僕の家と結婚するのはいいことじゃないかな?
圭吾君も安心すると思うけど」

そう言われると‐私は何も言えなくなる。


あの大嫌いだったお祖父様の言葉は……ある意味、正しいのだ。

これから神社や…圭ちゃんを支えて行くには、ちゃんと理解のある人と結婚することが何より一番望ましい。特にうちは『理屈で説明できない何か』の塊なのだ。理解できる人でないと務まらない。

それには……やはり、うちの家と近しい人との結婚が望まれる。
確かに歳の差はあるが、和茂さんは条件に合う人物であるのだ。



いやいや……条件か良いからと言っても……そもそも、だ。


「でも……和茂さんは、私と夫婦になれますか?」

そう問いかけると、和茂さんはほんの少しだけ口角を上げて頷く。


「なれると思ったから、こはるちゃんに提案したんだよ。愛は無いけど、情は持てる。幸せな家庭を築いていける自信はある。
圭吾君の家族みたいな、ね?」
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