稲荷と神の縁結び
それはちが……と喉元まで出たが‐言葉をググッと奥に押し込めた。


確かに幼い頃の私と圭ちゃんは、夕湖ちゃんを心の拠り所にしていたことには間違いがない。

でも……圭ちゃんは、百パーセント『好きだから』という気持ちだけで、夕湖ちゃんと結婚したわけではないだろう。
それは夕湖ちゃんも重々承知の上で結婚を受けた。

多少の、いや…かなりの打算があって……圭ちゃんは一番『最適』な結婚を選んだのだ。そんな中でも幸せな家庭を築いている二人は、ある意味後継ぎとしての見本のように思う人が多い。

‐きっと和茂さんも、そんな結婚をしたいのだろう。


「それに結納金として、鳥居の修繕費をこちらで負担できる」


その言葉に‐思わず息を呑んだ。
もし私がこの人と結婚すれば…金銭的負担が少なくなる?子供達の学資保険は解約しなくて済む?


私はずっと圭ちゃんや夕湖ちゃんに助けられて来たけど………次は、私が助ける番なのではないか?
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