稲荷と神の縁結び
私が結婚して幸せな家庭を築いて…尚且つ金銭的な援助もできるというのなら、今まで受けた恩を一気に返せるのではないか。それに行けず後家扱いされていたけど、それもこの人と結婚となれば一気に見返されるだろう。


どんどんと……グラグラと気持ちが傾いていく。


「こはる!」

その傾いていく気持ちを‐一気に引き戻す声が飛んでくる。

まさか…とは思ったが、振り向いた先に居たのは、やはり。



「清貴さん…………」

睨むような目付きで、私と和茂さんを見ている。


和茂さんは軽く会釈をして、私に耳打ちする。
「前にも見たけど、こはるちゃん知り合いなの?」

「えっと………圭ちゃんの、友達…………」
(他に諸々あるけど………)

「そっか。じゃ僕は行くから」

和茂さんは、清貴さんに近付くと‐深々と頭を下げた。

「先日は、兄がご迷惑をおかけしました」

そして最後に振り返り‐にっこりと微笑んで「考えておいてね」とだけ言い残して、和茂さんは帰っていった。
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