稲荷と神の縁結び
「起きて!!」

「ゆっくり休んでって……言ったじゃ……」

「緊急!緊急!!」


緊急って何だ?
体をゆっくりと起こすと時計が目に入った。時刻はまだ朝の九時。

ふあぁと呑気に欠伸をしている私に‐夕湖ちゃんが肩を掴んでゆする。

「永江さん一家が来ているの!!」


はて、永江さん………?
永江さん………永江さ…


「えええっ!!」

私は一瞬にして正気に戻る。
何であの一家が?

私は飛び起きて、夕湖ちゃんと廊下を走る。

そして居間の扉を開けた先には‐うちの両親、圭ちゃんと……テーブルを挟んで永江一家が。
清貴さんがなぜか真ん中。清貴さんと清様は紋付き袴姿で、滋子様は黒留袖。

何か清様は余計に狸っぽさが増しているし…。
滋子様の着物姿は初めて見たけど…いつもの化粧とは違い、黒留袖によく似合っているケバすぎない上品なお化粧。意外と着物姿も似合っているな。でも出で立ちがいかにも『姐さん』的な……って違う!!



なぜこの一家が、こんな正装でうちに?!
目を丸くして立ち尽くす私を、両親は中央に座らせた。

座ると目の前には‐清貴さん。
かしこまった表情に、紋付き袴姿は迫力がありすぎて……私は萎縮したようにブルブルと体を震わせる。
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