稲荷と神の縁結び
そう問いかけると、清貴さんはようやく真面目な顔を崩して笑顔を見せた。

「メリットなんか、どうでもいい。俺はこはるさえ居てくれれば、何でもいいんだ」


私さえ居てくれれば、何でもいい。
その言葉になぜか……泣きたくなる。


「こはるは俺のことは、好きか?」

そう言われるとわからないが…ずっと、考えたくなかったことが、一つだけある。

「好きかどうかはわかりませんが……一緒に居るのは、居心地が良いです。ずっとこの生活が続けばと心の奥底では思ってました。
私は『今年いっぱいお世話になる』筈でそろそろ期限が来るのを知りながら……なるべく、この生活が終わらないように、ずっとその話題を避けてました」


気が付けば‐頬から涙がつたっていた。

そろそろ私は……あの家を出ていかなければいけない。

それはずっとわかっていた。でもずっと……考えないようにしていたのだ。話題に上がらないよう避けていたのだ。


清貴さんは優しくその涙を拭って、こう言った。


「じゃあ俺のこと、好きなんじゃん」
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