稲荷と神の縁結び
そう言われると……はっとなる。
今まで何かがブレていたものが、ようやくカチッとはまったような、そんな感覚がした。


「それに、『仕事ができて、社会的地位があって、真面目で、頭が良くて、尚且つお金持ち』な人間がここに居るんですけど?」


あぁ、そうだよなぁ。

仕事には文句が出ない程完璧。むしろ真面目すぎるぐらい。尚且つ父親の代からの社長という御曹司。
今思えば…この人がまさにそうではないか。


「確かに」

涙が引っ込みそう頷くと、清貴さんは顔をくしゃくしゃにして笑う。
初めて見る、無邪気な屈託のない笑顔を見せてくれた。私もつられて、自然と笑顔に。


すると清貴さんは自然に‐私の肩を抱き寄せる。
そして頬にそっと、唇を重ねる。

その感覚はくすぐったくて…居心地が良くて。

あぁそうか。あのぼんやりとした中の感覚と一緒だ。触れられるのは…こんなに心地が良いのか。


「こはる。改めて言おう。俺と結婚して欲しい」

私は「はい」と頷き、微笑み見つめる。

蕩けるように見つめ合って…もう一度唇が近付いてきた瞬間‐


『ガタッ』
大きな音が鳴る。ドアが開いた音だ。
そっちへ視線をやると、立っていたのは圭ちゃんだ。ちゃんと紋付き袴姿。
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