稲荷と神の縁結び
そりゃそうだ……。今日は結納だけの筈だったと思うのだけれど、気付けば本人そっちのけで未来のことが一気に決まって行っているのだ。
いやぁこういうのって…普通は徐々に話し合いながら決めるものでは…ってそうだうちは普通じゃないのであった。


呆然としている私と清貴さんを、圭ちゃんはクスクスと笑って見ている。
何かやっぱり、その笑みには影が見える。さすが腹黒神主である。


圭ちゃんは散々笑った後、「さて…」と言って立ち上がった。


「どうする?もうさっき清貴のご両親帰ったし、二人も帰る?」

「そうだな」

そして清貴さんも立ち上がって‐私に手を差し出した。

「帰ろうか、こはる」


帰ると言われても……と言いかけて、あぁそうかと気付いた。


そうだな。帰ろうか。


「はい」

私はその差し出された手を‐しっかりと握る。


そろそろ帰ろう。我が家に。
お稲荷様が居る、あのお屋敷に。

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