偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「大丈夫ですか?」
「ええ、すみません……うっかりしていて」
「いえ。僕が悪かった。君の気持ちが変わらないうちに、と。少し焦りすぎたみたいだ」
髪をかき上げて、少し照れたように笑った。
まさかそんなことを思っていたなんて。失礼だけれども、ちょっとかわいいと思ってしまう。
彼のいろんな顔を見たい、わがままとも思える気持ちが湧いてくる。これも彼に恋するがゆえだろう。
「気持ちは変わりません。わたしも、楽しみですから」
恥ずかしいけれど相手の気持ちを知りたいなら、自分のことも知ってもらわなくてはいけない。
すると尊さんは、ぱっとわたしから顔を背ける。
もしかして、積極的過ぎただろうか。はしたなかったかもしれない。さっきまで期待に膨らんでいた胸が、しゅうと音をたててしぼんでいくような気がした。
失敗しちゃった……?
「尊さん……?」
顔を上げて彼の顔を恐る恐る見た瞬間、強く抱きしめられた。彼のジャケットに頬をつけると、いつもよりも強く彼の匂いが香る。