偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

 他人からの予想通りの評価に傷つきながら、わたしは彼女たちの視線を避けるように俯いて、彼のもとへと歩いた。その背中にも視線が突き刺さる。

 気にしない、気にしない。それだけ尊さんがかっこいいっていうことだ。

「お待たせして、すみませんでした」

「いや。お湯で頬がピンクになったかわいい君を見られるなら、いくらでも待つよ」

「もう! そんなこと言うの、尊さんだけですよ」

 わたしはすっぴんの顔を左手で隠し、右手で座っている彼の肩を叩いた。

 普段から薄化粧だし、一緒に暮らしている以上、彼には何度も素顔を見せている。

 だからと言って、そこに触れられるのはやっぱり恥ずかしい。

「あたりまえだ。他の誰にも君の素顔は見せない。それは僕のものだ」

「酔ってるんですか?」

 そうじゃなければ、素面でそんなセリフおかしい。

「全然。本気だよ。那夕子こそ、警戒心がなくて心配だ」

「それを言うなら、尊さんだって……浴衣姿がかっこいいです。さっきわたしの前にいた女性の二人組の方も、尊さんのことをじっと見ていました」

 そしてわたしを見て、〝この程度の女が〟と、顔に書いてあった。さぞがっかりしただろう。
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