偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
すぐに手にとり、中身を確認する。
「これ……」
心臓病の薬だった。どうやら女性は狭心症を患っているらしい。
一緒にあった薬剤情報の用紙を確認して、一粒取り出し女性の口元に持って行く。
「これを舌の下でとかしてください。落ち着いてゆっくり」
女性が小さく口を開けたのを見て、わたしは彼女の舌下に薬を差し入れた。
わたしの言ったことを聞いて、女性はゆっくりと口の中で薬を溶かしているようだ。
ちゃんと薬が効けば一、二分で良くなるはず。
わたしは腕時計を確認しながら彼女の様子を窺う。
「救急車、すぐに来るそうです」
「わかりました。とりあえず、バッグにあったお薬を飲んでもらっています。これで良くなるといいんですが」
「あの……わたし、奥様のお病気のことはよくわからなくて……」
オロオロとする秋江さんに「大丈夫ですから」となだめて、女性の様子を窺う。
川久保豊美(かわくぼとよみ)さん……薬の袋に記されていた名前を見て、声を掛ける。
「川久保さん、いかがですか? すぐに救急車が来ますからね」
「はぁ……はぁ、すみません……」
幾分呼吸が楽になったのか、言葉を発する様子を見てわたしはほっと胸をなで下ろした。
よかった……薬がちゃんと効いたみたいで。