偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「あんまり生意気なこと言っていると、後悔することになるぞ」
ギロリとにらみつけられた。馬鹿にされたと思った翔太が低い声で脅しの言葉を発する。
怖くて肩がびくっと震えた。口を閉じ、テーブルの下でぎゅっと拳を握った。恐怖に虐げられないように、必死になって背筋を伸ばす。
翔太はわたしのおびえた態度に満足した笑いをみせる。
「そうだ、そうやってお前が黙って俺に従えば、面倒なことにはならなから安心しろ」
「どういうことなの? 面倒なことって……」
不適に笑う翔太に尋ねる。彼がなにかを企んでいるのは確かだ。
翔太が椅子にもたれて、足を組み替えた。ちょうど運ばれてきたコーヒーを飲んで、もったいつけた態度で、わたしを焦らす。
「川久保専務だが、ここ最近大変お忙しいようだな」
不適な笑みを深める翔太が尊さんの名前を口にした瞬間、胸がぎゅっと押しつぶされたような痛みが走った。
「尊さんになにかしたの?」
「別に彼個人になにかしたわけじゃないさ。川久保製薬がちょっと困ったことになっているだけで」
「いったい、なにをしたの!?」
わたしが前のめりになった瞬間、ガタンと椅子が音をたてた。周囲の視線が集まる。
「大きい声を出すな。生意気な態度をとるな」
低く鋭い声はわたしをおさえつけようとしている。
くやしくてわたしは唇を噛み、「ごめんなさい」と小さく口にした。言いたいこともあるし、彼に屈するのは屈辱だ。けれど翔太の本当の目的が分かるまでは、こうするしかない。