偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

「笑っている方が、可愛いです」

 可愛いって……わたしが?

 そのまぶしいくらいの彼の笑顔を直視できず、わたしは顔を赤くして目を背けた。

 そんな恥ずかしくなるようなことをさらっと言うなんて。

 このときわたしは初めて川久保さんが誰もが目を引くほど整った容姿をしていることに気がついた。それまでは、早く病院から出ることだけを考えていたのだ。

 逸らした目を、おもむろに彼に向ける。

 背中にかばわれたとき、背がすらっと高く、けれどしっかりとした体つきで守られている安心感があった。声も落ちついたバリトンで耳に心地良い。

 それに加え、驚くほどの甘いマスクにはため息がもれそうだった。形の整った眉に、アーモンド型の澄んだ瞳。少し口角の上がった品の良い薄い唇。どこをとっても完璧としかいいようのない、整った顔立ちだ。

「どうかしましたか?」

 彼は思わず見とれてしまっていたわたしの顔を不思議そうにのぞき込んできた。

「いえ、なんでもありません」

 よかった夜で。昼間ならこの赤い顔見られるところだった。
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