偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「本当に大丈夫なんですか? もし気分が悪いようなら――」
――ぐーっ。
うそ、でしょ? まさかこんなときに。
盛大になったおなかの音が、自分でも信じられない。恨もうにも自分のしでかしたことだ。
「す、すみません。安心したせいか、急におなかが……」
そう言い訳じみたことを言っている間にも、きゅるきゅるとおなかが鳴る。
もう、どういうこと! 静まれっ!
心の中で腹の虫に八つ当たりをしていると、頭上からクスクスと言う笑い声が聞こえた。
顔を上げると、川久保さんが口もとを押さえて必死に笑いをかみ殺そうとしていた。
「すみませ……ん。……っ、ふははは」
しかし結局我慢出来ずに吹き出してしまった。
あぁ、恥ずかしい。穴を掘って潜りこんでしまいたい。
いたたまれなくなったわたしは、その場を離れようと彼に頭を下げた。