偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
病院を出て十五分くらいすると、車は閑静な住宅街に入っていった。

 都内でも有名な場所で、あたりには大きな家が立ち並んでいる。どのお宅も素晴らしく思わず目を奪われていると、その中でもひときわ大きな家――いや、屋敷の前で車が速度を落とした。

 川久保さんが車内からリモコンを操作すると、門が自動でゆっくりと開いた。その中に車を入れる。

 はぁ……すごい。

 ぽかんと口をあけたままその様子を見ていたわたしに「着きましたよ」と彼が声をかけてきて、はっと我に返る。

 もたもたとシートベルトをはずしているうちに、助手席に回った川久保さんがドアを開けて待っていてくれた。

「ありがとうございます」

「いえ、どういたしまして」

 さきほどから続く丁寧な扱いにやっぱりなれずに、ぎくしゃくしてしまう。

 しかしそんなわたしの様子を気に留めることもなく手を差し出して、わたしが降りるのを手助けしてくれた。

「さあ、こちらです」

 そっと背中を押されて、先を促される。

 スマートな女性の扱い方に、きっとモテるんだろうな、とか考えてしまう。

 いったいなに考えてるの?

 ここに来たのはお見舞いのためなのに、なんで川久保さんのこと気にしてしまってるの⁉

 こんなふうに知り合ったばかりの人について考えることって、今までなかったのに、なんだか川久保さんといると色々調子が狂ってしまう。

 ぐるぐるとどうでもいいことを考えていたわたしだったが、石造りの洋館に一歩足を踏み入れて目を見開いた。
 なんなの、これ?

 ぽかんと口を開けて、ぐるりと室内を見渡した。かなり間抜けな顔になっているのはわかっていたが、その豪華さにこの顔以外しようがなかった。

 玄関は吹き抜けのホールのような作りになっていた。赤いじゅうたんの先には長い階段が続いており、明治の時代にタイムスリップしたような気持ちになる。

壁には立派な額縁に縁どられた大きな絵画が飾られており、より高級感を醸しだしていた。

 家具や飾られている花瓶など、手入れが行き届いており素人のわたしが見てもどれも高級なアンティークものだということがわかる。
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