偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
案内されたソファに座ると、すぐに秋江さんがワゴンを押して部屋に戻ってきた。
そのワゴンの上にはアフタヌーンティーセットがあり、三段のトレイに小ぶりのスコーンやカヌレ、ケーキやマドレーヌなどがキレイに並べられていた。一番上には異彩を放つたい焼きが堂々と乗せられている。
なんだか……な。まあ、喜んでもらえたから、いい……か。
心の中で自分に言い聞かせてから、わたしは秋江さんの淹れてくれた紅茶を手にした。
「川久保さん、病状が落ち着かれたようで安心しました」
ゆっくりと話しかけたわたしに、川久保さんのおばあ様はきょとんとした顔で返してきた。
「いきなり……どうかなさったの? 川久保さんなんて他人行儀な」
「えっ?」
他人行儀もなにも、川久保さんのおばあ様と話をしたのは倒れるまでのほんのわずかな時間だ。だから紛れもなくわたしは他人だけど?
困惑したわたしの顔を見て、川久保さんが助け舟を出した。
「なにいってるんですか、おばあ様」
「だって、川久保さんなんて……今まで通り〝おばあ様〟とは呼んでくれないの?」
「今まで……?」
わたしはまたもや助けを求めるようにして、川久保さんを見たが彼も驚いているようだ。
どうも様子がおかしいけれど、わたしはそのまま話を合わせることにした。
「そうですね! 今まで通り、そう呼ばせていただきます」
〝おばあ様〟のシュンとしょげた様子を見て、わたしはあわてて明るい声で笑いかけた。