偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
本人がそう呼んで欲しいと言っているのだから、それに合わせて呼べばいい。
川久保さんはまだなにか言いたそうにしていたけれど、わたしはそのままおばあ様のお皿にたい焼きを取って差し上げた。
「秋江さんが温めなおしてくださったみたい。ほかほかですよ」
おばあさまはわたしからお皿を受け取ると、うれしそうにたい焼きを食べ始めた。
そこからはたい焼きを頭から食べるか、尻尾から食べるかとか……他愛のない話をした。
お年を召してなおその気品を失っていないおばあ様や、ユーモアにあふれる川久保さんとの会話は時間を忘れるほど楽しかった。
ここのところ殺伐と過ごしていたわたしには、おいしいお茶とお菓子、笑顔でかわすウィットにあふれる温かい会話が、心を癒してくれた。
お見舞いに来たのに、わたしの方が元気をもらっちゃったな。
時計を見ると、すでに二時間も経過していた。わたしはおかわりをした紅茶を飲み干すと、おばあ様に声をかけた。
「今日はお招きいただいてありがとうございました。これからもお身体を大事になさってくださいね。わたしはこれで失礼しますから……」