偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「あら、那夕子さんこれからお出かけになるの? 何時ごろ戻ってくるの? お夕食までには戻るわよね?」
「おばあ様? あの……わたしは……」
まさか夕食時までご馳走になるわけにいかない。
困ったわたしは助けを求めるようにまたもや川久保さんを見た。これで三度目だ。
彼もすぐにおばあさまに話をしてくれる。
「おばあ様、わがまま言ったらだめですよ。小沢さんは忙しい中……」
「小沢さん? 尊、あなた自分の妻をそんな呼び方して。まさか、ケンカでもしたの?」
おばあ様の言葉にわたしは息をのみ、目を大きく見開いた。
聞き間違いでなければ、わたしのことを川久保さんの〝妻〟だと言った。
「なに、言ってるんですか。しっかりなさってください」
同じように――いや、わたし以上に――驚いた川久保さんは一瞬大きく目を剥いた後、なんとか顔に笑みを浮かべたものの、おばあさまの発言に驚きを隠しきれない様子だ。
「しっかりしないといけないのは、あなたでしょう? また那夕子さんを困らせたの?」
「……何言ってるんですか」
川久保さんは、おばあ様の肩に手を置いて心配そうに顔を覗き込んでいた。
「夫婦には夫婦にしかわからないことがあるでしょうから。ふたりで解決しなさいね。お食事まで、わたくしは休みますから。食事にはちゃんとふたりで席につくこと、わかりましたか? 尊」