偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

「あ、あの……えーっと。尊さんはどうしてここで寝ているんですか?」

 努めて冷静に、バクバクする心臓の音を押さえつけて尋ねた。もちろん壁の方へ向いたままだ。寝起きの色気にまみれた彼を直視することなんてできない。そんなことしていたら、まともな話なんてできないだろう。

 たしか昨日の話では、寝室は別にすることになっていたはずだ。けれど、彼は紛れもなくわたしと同じベッドに横になっている。

「それはね、君が離してくれなかったからだよ」

「え? わたしがですか?」

 驚いてそれまで壁に向けていた身体を、尊さんの方へと向ける。

 頑張って思い出そうとしたけれど、まったく記憶にない。訝しむわたしに、尊さんは詳しく説明してくれる。

「急に眠ってしまった君をここにつれてきたんですけど、手を強く握って離してくれなかった、これ」

 彼が指さしたのは、身につけていた白いシャツ。そこにはしかりと皺が寄っていて、わたしが長い間強い力でそこを握っていたことが、安易に想像できた。

 うそ、わたしなんてことを!

 慌てて起き上がろうとしたわたしを、尊さんの手がおいかけてきてぎゅっと抱きしめた。

 図らずも彼の胸に顔を埋めることになって、心臓がドキンと大きな音を立てる。

「そんな、逃げることないのに。もう少しこうしていよう? 僕たちの約束では、スキンシップは禁止していなかったはずだし」

 ぎゅっと背中にまわされた手の温かさが、ふたりが触れ合っているのが現実だと伝えてくる。

「いや、あの……たしかに約束の中にはこういった類の話はありません……でしたが」

 頭がうまく働いてくれずに、あたふたする。
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