冷やし中華が始まる頃には
夕方4時になり、バイト終了の時刻になった。

初回の陶芸教室は和気あいあいとみんな楽しんでいたようで、ならも安堵した。

ひだまりを出ると、ちょうど峯岸がみんなの作品を車に乗せ終えたところだった。

「あ、バイト終わり?」

峯岸がならに気付く。

「うん。」
「じゃあ送るよ。」

峯岸がさらりと言う。

「まあ、猛もいるけど。大丈夫だよな?猛。」

後ろの席に座っている猛に聞くと、猛が「いいよ」と呟いた。

「いいって。俺、ちょっと菅原さんに挨拶してくから乗ってて。」

そう言って、峯岸は助手席のドアを開ける。

ずいぶんと気を許してくれているような気がする。

ならは少しどこか優越感を感じながら助手席に乗り込む。

猛はふてくされたように乗っている。

ならは、矢幡さんから聞いたアドバイス通り話しかけずにいた。

「おまたせー。じゃあ行くよー。」

峯岸は車に戻ってくるとすぐに発車させた。


「ならちゃん、今日この後用事ある?」
「いや、もう家に帰るだけ。」
「すごい申し訳ないんだけど、家にこいつら下ろして来ていい?」

峯岸は後ろの猛と、みんなが作った作品たちを指差す。

「ん?」
「デートしよ。」

・・・

「ちょっとお茶でも。」

爆発しそうになる頭で、ならはできるだけ冷静を保って答える。

「いいよ。」
「おっけー。じゃあちょっと家寄るね。」

車は峯岸宅に向かった。
< 34 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop