キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 今は悩んでる場合じゃない、私には大事な使命がある。そう、宙斗くんに向けられる好奇の視線を、印象を変えるんだ。そもそも人の趣味を笑う権利なんて誰にもない。それどころか、宙斗くんは夢を成功させたすごい人だ。尊敬されこそすれ、軽蔑されるのはおかしい。

「あ、乙女王子おはよー」

 どこからか、そんな声が聞こえてきた。私が顔を向けると、席に座っている宙斗くんを囲むように四、五人の男子が立っており、クラス中の視線がそこへ集まる。

「今日は可愛いリボン、結んでないのかなぁ?」

 男子たちは、代わる代わる宙斗くんをからかっていく。それを見ていた生徒からも「ぷっ、乙女王子だって」「なんかかわいー」などと、ヒソヒソ声がわいた。

 なのに宙斗くんは冷めた目で彼らを見ると、無言をつらぬいた。

 言われっぱなしの宙斗くんを、もう見てられない!

 まるで、私自身が悪口を言われているみたいに胸が痛くなる。耐えきれなくなった私は、自分の席に座ったまま大きく深呼吸をすると「わ、私!」と叫んだ。今度は教室のみんなの視線が私に集まり、若干の緊張を覚えながらも唾をゴクリと飲み込んで続ける。

「【Hiro】のハンドメイドのアクセサリー、すごく好きなんだ。この髪のリボンも可愛いし、お気に入りなの」

 私はポニーテールを結っているリボンに触れながら、できるだけ笑顔で話す。

「え、待って。じゃあ飛鳥が好き好き言ってたハンドメイド作家の【Hiro】って……」

    

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