キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「ふふっ、ごめんね。でも宙斗くん、私が彼女のときは可愛い傘をさしていてもいいんじゃないかな?」

 私の提案の意図がわからないのか、宙斗くんは片方の眉を持ち上げて首をかしげる。

「どういう意味だ」

「彼女の傘だってことにすればいいと思う」

「それはそうだが……お前は気になんねぇの?」

 気にならないのかって、宙斗くんが可愛い傘をさすことに対して言ってるのかな。そうだとしたら、いまさらだ。私はそんな彼の一面も含めて、好きになったのだから。

 私がきょとんとしていると、付け加えるように彼が言う。

「彼氏が女物の傘を使ってることにだよ」

「うーん。それについては、どうでもいいかな」

「は? どうでもいい?」

 クールな顔が崩れて、宙斗くんはポカンと口を開けたまま目を点にする。自分の前で素の表情を見せてくれる彼に心がポカポカして、思わずクスッと笑うと私は思ったままを伝える。

「趣味くらいで嫌になる程度なら、その人のことを本当に好きとは言えないと思う。私は宙斗くんのそういうところも含めて、好きだよ」

「……なっ」

 ワナワナ唇を震わせる宙斗くんは、驚愕の表情を浮かべている。

 どうして宙斗くんは、こんなに慌てて……うん? いま私、なにを口走った?

    

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