偽のモテ期にご注意を



「待たせたな」

軒下の階段に蹲る様に座っている沢城を見つけた時は、心臓が止まりそうな程驚いた。

上から下までずぶ濡れで、携帯を握り締めているその姿は異様だった。

松本の声にのろのろと顔を上げる沢城の顔は、紙のように白く生気が全く感じられなかった。

一瞬息を呑んだ松本だが、笑顔で話をしだした。

「そんな格好じゃ風邪ひくぞ。帰ろう」

「・・・」

虚ろな瞳で見返したが、松本の言葉に素直に反応して立ち上がろうとした。

「!」

だが、体は立ち上がる事が出来ず、途中で崩れていく。

慌てて体を支えて声をかけるが、反応は無かった。

自分の上着を着せて、何とか乗車拒否されずにタクシーに乗せて貰い、病院に行くと「過労と栄養失調」との診断が下された。

前々から、気になっていたが、手負いの獣のように、周りからの助けを拒み続ける沢城にどうする事も出来ず、歯痒い思いをしていた。

抱きかかえた時の軽さは、今思い出してもゾッとする。


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