水性のピリオド.
「おれ、どうしたらいい……?」
「まっすぐ帰って、うちには来なかったことにしよう。朝でもいいからわたしのメールに返信してよ」
「なんて返信するんですか」
「わかりました、でいいよ」
また新しい涙の粒をこぼすから、わたしもとうとう居た堪れなくなってくる。
どうしたらいいのか、って問いの意味を履き違えた。
わたしがわざとそうしたってわかっているから、返信を聞くことにシフトチェンジしたんだろう。
はるは、どれだけ心中が穏やかでなくても、頭の回転がはやいんだ。
わたしの言いたいこともぜんぶ、はるのなかで下してるはずで。
往生際悪く突っかかってくるのは、それだけわたしを想っているってことなんだろう。
「やだ。先輩が折れるまで、ずっとここでこうしてます」
「もうすぐ新聞配達の人が来るんだけどなあ……びっくりして腰抜かしたらどうするの?」
「それはおれのせいじゃないです」
背負わないし、転嫁もしないし。
そういうところも好きだった。
はるの背中を摩る手が止まらないのも、強く抱きしめ返したいと願うのも、ぜんぶ本心だ。
たぶん、はると一緒にいたって何も変わらない。
はるのそばで得てきた幸せと、これから見ていく未来に、きみを不安に思う要素なんてひとつもない。
強いて言うのなら、なおらない泣き虫くらいだ。