ただずっと、君が好き
「夏希には私から連絡しておくよ」


そう言いながら、スマホを手に取った。


『今度の土日、天形の学校の文化祭に行くけど、夏希も一緒にどう?』
『バイトないし、行くー』


夏希のところもちょうど休み時間だったのか、すぐに返事が来た。


「夏希も行くって」
「やった!楽しみだね!」


うん、とは言えなかった。


こうして、天形の学校の文化祭に三人で行くことが決定した。





土曜日、私たちは天形の学校の校門で待ち合わせをした。
また一番に着いてしまった私は、その場から中の様子を伺う。


中学のときとは違って、装飾も豪華だし、模擬店もたくさんあるみたいで、本当のお祭りみたいだ。


「おお!文化祭だ!」


気配を消して私の後ろにいた沙奈ちゃんが、子供のように騒いでいる。


「おはよう、沙奈ちゃん」
「ね、ひなた!まだ行けないの?」


挨拶ではなくそんなことを返してきた沙奈ちゃんは、本当に楽しみなんだろう。
そして、早く行きたいということしか頭にないのか、夏希の存在をすっかり忘れている。


「誘ってきた本人が忘れるってどういうこと」


少し遅れてきた夏希が、沙奈ちゃんの頬をつねる。


「いたたた。つい楽しみで、夏希のこと忘れてた」
「まったく沙奈は……」


二人のやり取りに思わず笑みがこぼれる。
変な緊張も、若干和らいだ。


「ねえ!」


すると、誰かに話しかけられた。
声がしたほうを見ると、浴衣を着たあの子がいた。


「あっ……」


沙奈ちゃんも気付いたみたいだけど、少し反応しただけで、見て見ぬふりをした。
真っ直ぐ見つめられる。


「あなた、ひなた?」
「そう、ですけど……」


その子の勢いに負け、同い年のはずなのに敬語になってしまった。
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