他人と何度も重ねたくちびるで、愛して



私も彼も、小林っていう苗字じゃないし、小林と特別仲がいいわけじゃない。



……彼と小林は同じ部活らしいけれど……仲はよくないらしい。



じゃあなぜか?



いまの怒声を聞いて、話す気がなくなった。



……それを、彼は表したつもりなんだろうな。



「いっくん」



呼び止めても、向けられた背中は微動だにしない。



私の声が小さかった……?



積もる不満と不安は、降りゆく雪より、多分、分厚くなっている。



いま、雪は降っていない。それなのに、雪よりも、心が冷たい。



指先が震える。



べつに、寒くなんてないのに、ね。
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