さよなら、センセイ

「あ、めぐみ先生!久しぶり!
よかった〜職員室行ったらいないから、探してたの」

その時廊下の向こうから、とびきり元気な声がする。立花綺羅だった。

「どうしたの?立花さん。
今日は三年生の登校日じゃないよね?」

「私、白杉短大の英文科決まったんです!
これで水泳部全員の進学が決まったから、皆で久しぶりに集まろうって。
めぐみ先生に部室の鍵を開けてもらおうと思って探してたんです!」

「そうなの⁉︎
よかったー!おめでとう!
鍵ね、ちょっと待ってて」

恵は、慌てて職員室に戻り、机の中から鍵を取り出すと、綺羅に渡した。

「ありがと、先生。
ねぇ、先生も一緒にきて?皆も先生に会いたがってるし。
部室でしばらく思い出に浸ったあと、いつものお好み焼き屋にも行くつもりなんです」

“皆”の中には部長であるヒロもいるはず。
ヒロは恵になんて会いたいと思っているわけがない。

「少し、仕事が残っているから…
今日は、部活は18時までだから、それまでに鍵の返却をお願いね」

「そんなに遅くならないですよ〜

ちょっとだけ。
ね?先生、ちょっとだけ顔見せて?
皆、先生に進学の報告して、褒められたいんですよ〜」
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