さよなら、センセイ
「どうして言わなかったんだよ、ウチのガッコの先生になるって。
1人で勝手に別れるなんて言ってさ。
俺のこと子供だなんてバカにしやがって」

恵は、体をふるわせてさらにうなだれる。
ヒロは怒りも露わに、そんな彼女を追い詰めていく。

「引っ越しして、携帯を変えて、そんなことしたっておんなじ学校に居れば顔も合わせるだろうしさ。
しかも、何?水泳部の顧問て。
俺が水泳部にいること、知らなかった?」


「ピアノが上手いし、音楽が好きだから音楽の部活だって、ずっと思ってた…」

声を震わせながら答える恵に、ヒロはトドメの言葉を浴びせた。


「結局、あなたは俺に興味がなかったんだろ?」

「そんな…!?」


追い詰められた恵の背中が壁にあたる。
その途端、ヒロは彼女の頬を両手で押さえ、強引に唇を合わせた。
そうやって唇を押さえたまま、彼女の水着の肩をするりと下ろす。
先程、同級生達が騒いでいた恵の胸が露わになった。
恵は、首を振り、体をよじって抵抗する。
だが、どこをどうしたら感じるか、ヒロは恵の体を熟知している。

「やめ…て」

くぐもった恵の声。しかしヒロはやめずに恵の体の隅々まで乱暴に口づけていく。

「高校生の前でこんな水着姿で現れるなんて」

そう言ってヒロは恵の水着を一気に引き下ろした。

「お願い、やめて。私、先生になったの」

「本気で嫌なら、俺の事を嫌いなら、大声で叫ぶなり、もっと抵抗しろよ。
生徒に犯されそうなんだろ?」

「…あ…」

反応してはダメだと思えば思うほど、恵の体は気持ちとは裏腹に、忘れられないヒロを求めて疼いてしまう。

ヒロになら、何をされてもいい。
例え、怒りに任せて乱暴にされても。


だって。私は。

やっぱり私は…

ヒロが…



「先生がなんだよ。生徒がなんだよ。

その前に、メグだろ。若月恵。



大丈夫。

何があっても、あなたを守ってみせるから。

だから…」




ーー離れないで。ずっとそばにいて。


愛してる。




ヒロの、身を切るような切実な声に、恵はハッと目を見開いた。
そして、ヒロの顔を見る。


苦しげに今にも泣きそうなほど歪んだ表情。
怒りなどとうに消えていた。


< 11 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop